大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所金沢支部 昭和26年(う)380号・昭26年(う)378号・昭26年(う)379号 判決

現業官庁の職員が予算により公認されない接待費、飲食費等の財源を得る目的で自己の主管にかかる業務に属する特定工事の請負業者に金員の寄附を要求してこれを収納する行為は凡て一律に涜職罪を構成するとは一概に論断することが出来ないであろうが、その行為の態様と当事者の意思並に客観的状況に照らし職務の公正と品位を害し、法秩序と官紀の紊乱に亘る性質の行為は当然違法性を具備し刑法上涜職の罪に該当するものと云わなければならない。

原判決挙示の証拠を見るに、被告人は電路工業株式会社の金沢出張所長であるところ、同会社が北陸電気通信局から請負つた地下ケーブルの撤去並に敷設工事及び同局直営の地下ケーブル接続工事に対する人夫供給の役務に関して工程の管理、指導、監督並に検査などの事務を主管する同局建設部線路課の主査山田一治から接待費の寄附名下で金員提供方の請託を受け、同請託は工事管理者としての同人の職務上の地位を利用し工事又は役務の請負人たる会社に与え又は与うべき監督上の便宜に対する報酬の要求を含むものであることを察知しながらこれに応諾し、会社が受け又は将来受けるベき右便宜の報酬の趣旨で原判示日時、判示の喫茶店において新聞紙包みにしたまゝ現金五万円を右同人に供与した事実が肯認せられるのである。右金員授受の場所及び態様と当事者の意思連絡に現われている行為の秘密性に鑑みれば右行為は弁護人所論に挙げられている設例の性質と比較し、公務の執行に期待される公正と廉直と品位を著しく侵害することにおいて同一の段ではなく法秩序と官紀を紊る危険な違法性を具備するものと云わなければならない。よつて右所為を刑法上涜職の罪に問擬し被告人に贈賄罪の成立を認定した原判決の事実認定並に法律の適用には所論のような誤りはない。論旨は理由がない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!